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【講座】設計者の市場価値
2019.6.16

機械の分野での設計者の市場価値は、20年ほど前の社会人成り立ての頃から大きく変化していることは、設計者は認識しているでしょう。

社会人として始めて会社に入社した頃、設計者はドラフターと呼ばれる製図機器を用いて設計製図作業を行なっていました。

当時はパソコンもまだまだ普及しておらず、私もドラフターを使った製図の練習をさせられていたものでした。

ドラフターで製図するためには、絵画と同じく構図を事前に考える必要があります。

製図する前に、完成形のイメージを固め、そこに向かって書き出す要領です。

製図する人の、筆圧やセンスや図面の美しさが問われる、職人の成せる技が必要な作業であったように記憶してます。

なので図面を描く、という作業自体が難しい技術が必要で、設計者という職業にも大変付加価値があった時代でした。

 

しかし、入社間もない頃からパソコンの普及と、2次元CADという製図用のパソコンソフトが普及するようになりました。

この存在によって、設計者に求められるものが大きく変化するようになりました。

まず、当然のことながらパソコンのスキルが必要となりました。

当時、ご年配の外注設計者が、この2次元CADの普及によって、徐々に職を失いバイト生活を余儀なくされていたのが衝撃的でした。

この2次元CADの登場により、設計する際に構図を事前に考慮する必要は無くなりました。

パソコンの中の無限に広がる描画スペースに好きなだけ描き込んで、最終的に使用する部分を表示する事で図面になる、

設計者としては大変画期的なものでした。

このおかげで、大きなものを図面に描く際に必要な「縮尺」という概念は、設計中はあまり考慮せず描けるようになりました。

そして、何よりデータを共有するということができたのも大きな要素です。

一度描いたデータは無限にコピーして利用できるという、今では当たり前のことが、ドラフター時代の手描きで製図作業する人からすると驚異的な機能でした。

これにより、単品の部品図を描く、”バラシ”という作業は、元のデータを編集し使用できるようになり、これまで部品図を逐一設計検討しながら製図を行なっていた”バラシ”という作業の付加価値が、大きく低下したのもこの辺りからでしょう。

 

そしてさらに時代は進み、3次元CADという立体的な画面を扱うツールに変化しています。

”線を引く”という作業から”ブロックを積み重ねる”という積木のような作業に変わってきました。

このツールにより、正確な図面を引きという技術の概念は無くなりつつあります。

すでに弊社でも3次元CADを導入していますが、設計製図する考え方がまるで変わってきました。

2次元CADの時代は、製図という作業自体に正確さが求められる手間が掛かる作業なので、紙面に落書きしながらアイデアを考える、”ポンチ絵”を描くと手法が主流でした。

しかし、3次元CADが普及し描くという作業が自動的に正確さを伴うようになり、製図作業に”正確さ”という技術の概念がなくなりつつあります。

「製図技術」という技術者から、「イメージ」するというクリエイティブな発想力が求められる時代になってきたように思います。

「製図技術」というものに付加価値が無くなり、設計者という職業の参入障壁がかなり低くなったような気がします。

 

ツールが便利になってきた分、設計者という職業の価値は、昔に比べ大きく低下しているように思います。

この先の未来を考えると、AIなどの進化に伴い、さらにツールの進化が進み、機械を設計するという技術には価値が無くなる次代が来るかもしれません。

そうした時代が来ることを踏まえ、私たちは今ある技術に溺れることなく、

 

「私たち人間だからできること」

「私だけにできる感性の力」

「私だから気がつく直感力」

 

こういった能力を活かし、仕事をクリエイトする必要があるのでしょう。

 

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