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【講座】「技術」=「価値」ではない
2019.8.27

私たちのような「モノづくり」に携わるものは、しばしば技術の追求を求められます。

 

例えば、0.001mmの誤差を許さないような精密な寸法精度を求められる部品があります。

 

この条件を満たすような部品を実現しようとすると、ありとあらゆる周辺の機材にも精度が求められ、

機械的な精度だけでなく、温度管理や衛生管理が必須になります。

 

また、それらを扱う技術も高度なものを求められます。

 

この精密な精度が、これが動く機械の話になると、さらに困難な話になります。

 

頑丈な作りが求められ、もちろんその機械を構成する部品も精密な精度を求められ、

その機械を構成するあらゆる部品が精密部品となります。

 

また、高速で動く機械となるとさらにパワーと剛性が求められます。

 

緻密な計算と、それを実現させる技術、それを作れる環境など多くの要求事項があるのです。

 

しかし、これらの技術の困難さが、そのまま価値になるかというと別の話なのです。

 

元々私は、会社員として工作機械やロボットなどの設計開発を行っておりました。

 

常に技術を求められ、また技術は日々進化するので、それに追随することも求められてきました。

 

少なくとも私がいた会社の労働環境は、かなり疲弊的な環境であったように思います。

 

ある時期、某ゲームメーカーに入社しました。

その会社は、UFOキャッチャーのようなアーケードゲームを作るメーカーでした。

 

その会社に入った時、強烈なカルチャーショックを受けました。

私の職種は、それらゲーム機の機械的な設計開発でした。

 

これまでの工作機械やロボットのような開発とは、求められるものが根本から異なりました。

そもそもゲーム機に求められるものは、精密さではなく、面白さ、だったのです。

 

まじめに仕事をすると笑われてしまうような雰囲気の会社でした。

真剣に面白さを追求するという文化は、当時は新鮮でした。

 

また、確実に精密に動くものは、むしろタブーな世界でした。

 

もしUFOキャッチャーが思うように正確に確実に動いたらどうでしょう?

いろいろ不都合が起こりそうですね。

UFOキャッチャーは、ふらふらと危なっかしい動きをすることが望ましいのです。

 

正確に動く機械より、どのように動くか分からない機械を求められることもしばしばです。

 

そのような環境でしたので、これまで培ってきた高度な技術や精密さなどは、

ある意味、まったく歯が立ちませんでした。

 

技術も精度もハイテクさも、うんと低いレベルなのにも関わらず、

また事業規模も変わらないレベルにもかかわらず

これまで勤めてきた工作機械やロボットのメーカーより

売上や利益などは、はるかにこのゲームメーカーが勝っていました。

 

売上や利益は、技術と比例しない現実と向き合わされました。

 

世の中ではあくまで価値を提供することが事業です。

技術は、それを提供するための一つの手段です。

 

単純な技術の追求ではなく、顧客にとっての価値を提供することが大切です。

 

フェーラーリのようなスーパーカーは、すごい技術でしょう。

だけど、一番売れる車ではありません。

 

ハイテク技術を詰め込んだ高級車もまた同じです。

必ずしも一番売れるものではないでしょう。

 

ラーメン屋さんでも、どれだけ手間暇かけて、

誰にもマネできない一子相伝の独自の製法でラーメンを作っても

結局不味いと売れません。

また、例え美味しくても、どこにそのラーメン屋があるか分からないと売れません。

 

結局のところ、顧客にとっての価値を提供する必要があるのです。

 

 

【産業機械・生産設備・省力機械・搬送装置・ロボット】

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